CBTC[2] 今までの信号と何が違うの?

今まで信号というと、列車の安全を担保するものでした。人間が誤ってもそれを機械が救ってくれるATP機能。しかし、CBTCが普及しだして、ATPという機能は当たり前であり、ATPの要求よりも稼働率や運用のしやすさなどサービスに重きを置くようになっている気がします。日本でもATO運転、所謂自動運転も話題になってきてます。しかし、まだ、日本ではATO=TASC(定点停止)のイメージが強く、海外でいう自動運転とは少し異なるのかなと思います。まあ、これは解釈の仕方の問題なのでどうでもいいことかもしれませんが。

前回のブログでも書きましたが、今までの列車位置検知というのは地上側でなんらかのセンサーを設けて、列車がいる(列車在線)を検知することで、在線している列車に他の列車をぶつけないとか、転轍機の上に在線していたら転轍機を転換させないとかなどの安全機能を担う根幹でした。地上で列車を検知する方法はいくつかありますが、そのどれもが軌道を複数のブロックに分けてそのブロックに列車がいるかどうかを検出する手段です。ブロックの中にいるかいないかで列車を検知します。

固定閉塞

この方式を固定閉塞(Fixed Block )方式と呼んでいます。固定閉塞方式では在線した閉塞の中の何処に列車がいるかが分かりません。閉塞長の長い場合は、後続列車は閉塞長よりも詰めることができないので、在線本数を増やすことができません。都市部では閉塞を短くすることで列車本数を増やしていますが、固定閉塞は地上列車位置検知方式なので、地上設備が増えてコストアップにつながります。閉塞を作る方式は起動回路方式Track circuit)、ループ式車軸カウンタaxel counter)などがあります。日本では好んで起動回路方式を多用しているようです。

CBTCの特徴でもある詳細な列車位置検知による移動閉塞の実現の為には、地上側で位置検知するよりも車上側で位置検知するほうが圧倒的に有利なのです。なぜなら、地上で列車の位置を詳細に検知するためには、地上設備に詳細に列車位置を検知できる装置が必要になります。それは列車が居る居ないにかかわらずその装置が必要になります。それに比べて車上で位置を検知するのは列車いる位置だけでよく、それも自分の位置だけで良いのです。列車が居ない位置を検知する必要がないのです。すなわち、列車検知装置はその列車だけに搭載すればいいということになります。ここで、従来型とCBTCの根本的な違い気が付かれた方がいればそれは素晴らしいと思います。

分かりましたか?

機能安全を勉強した方なら気が付いたかもしれませんが、人やモノの存在を検知するのに二つの方法があります。それは、

  • 危険検出型(アクティブ型)
  • 安全確認型(パッシブ型)

もう、わかりましたよね。車上位置検知は危険検出方で起動回路方式(アクセルカウンタもそう言っていいかも)

は安全確認型なのです。何となくわかっていた人はいると思いますが、これですっきりしたのではないでしょうか。これは、CBTCのシステムを構築するときに大きくかかわる問題なので理解しておくとよいでしょう。

この違いが何を生むかですが、非CBTC列車の扱いを生みます。まあ、起動回路も短絡しない車軸では同じではないかという人もいるかも知れませんが、アクティブとパッシブということを考えれば、わかりやすいと思います。この非CBTC列車の扱いが非常に難しく、また、間違えると事故につながるのでシステムを設計するときはよく考えてください。

これに似たようなことですが、列車の移動と列車の位置が密なのもCBTCが難しい理由です。固定閉塞方式は列車の移動と列車の位置独立しているので、列車検知を考える上では、移動とか速度をあまり考える必要はありません。それに比べてCBTCは列車の移動がそのまま位置に直結します。CBTCでの列車位置検知にはPluse Generator (PG)が使われることが多いですが、この移動と位置が密接な関係にあることから、固定閉塞では気にしない車輪の空転滑走がPGを用いた列車位置検知には重要な要素になります。そのため、滑走空転を気にしないで済む非接触型のドップラー速度計との併用や加速度計との併用も考慮入れた方がいいと思っています。どちらも設置方法や重力加速度の問題など色々と考えることはありますけど。

車上位置検知原理

もう一つのCBTCの特徴である無線を用いた地上ー車上間通信について書いてみたいと思います。従来の信号システムでは地上から現示情報(信号現示や制限速度など)を送っていて、車上から地上にデータを送るのは一部のトランスポンダを使用したシステムで使われるのみでした。しかし、CBTCではそれに比べて大容量の高速データ通信が可能です。

こんな質問もよく受けます。

「CBTCって従来より安全です。と書いてあるけどどうしてなんですか?」

そんな質問を私が受けたとき、こう答えるようにしてます。

「車上の情報がリアルで地上に伝わるから、それが分からない従来のシステムより安全だと思います。」

どうでしょう? なんとなく納得してくれましたか?

実際は安全かどうかというよりも、列車制御という観点では地上側しか知らなかったこともリアルタイムで運転士や車上装置に伝えられるのでサービス面では遥かに向上していると思います。